邪魔 奥田英朗 著

放火事件をきっかけに主婦、不良少年、警察官、ヤ●ザ達の人生が狂っていくお話。
いやー、おもしろかった。読み終わったあとは自分の人生を考えさせられた。単純なサスペンスではなかった。あ、このミスの2位を取っている作品だそうです。
以下、ネタバレ
及川妻の転落ぶりは凄まじい。プライド高くて気も強いという性格のせいもあって、孤立してしまったというのはあるけど、それにしても不幸すぎた。スーパーに歯向かった時が人生の分かれ道だったんだろうな。あのとき、共産党のグループと縁を切っていれば、(旦那が逮捕されたとしても)子供と生活できただろうに。自分が女だからか、どうしても及川妻が気になった。あの不良少年なんかは自業自得だし。(というか結局、一番うまいことなったのは彼らだった)
久野警部の義母は彼の妄想の中だったというのはぶったまげた。こんなに病んでいるのに、なんとか人生を生きている、泣けてくる。
この小説の後半。及川妻が放火するまでの場面。及川妻と久野、それぞれの視点から同じ時間軸で語られるところ。リアル。リアルすぎて、読んでるこっちの気持ちが高ぶった。電車で読みながら、悲しいシーンでもないのに涙がでそうになった。あれはなんじゃったんじゃろ。
この小説のテーマは「しあわせ」だったんかな。人生をいかにしあわせに生きるか、最大の難問です。
印象に残った言葉たち・・・『もしも人生が続けられるのならば、しあわせに背を向けるのはやめようと思った』『しあわせを怖がるのはやめようと思った』『人はしあわせになりたくて生きている。そんな当たり前のことに、やっと気づいた』『しあわせなんてあっけなく霧散するものなんだな』

邪魔(上) (講談社文庫)

邪魔(上) (講談社文庫)

邪魔(下) (講談社文庫)

邪魔(下) (講談社文庫)